宇宙と地球、そして人をつなぐ架け橋
「やりたいことが決まっていて、その思いに伴って行動するって本当に大事」
スペース業界で営業として活躍されている那須桂子さん。
大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO:ジェトロ)に就職。
その後シアトルに移住し、事業開発やCEO秘書、マーケティング兼ビジネスデベロップメントスペシャリストとして活躍。
現在はドイツのロケット製造会社に勤め、国際会議での登壇も行っている。
世界を股にかけ、スペース業界で輝かしいキャリアを歩む桂子さんだが、数年前までは自身のキャリアに悩んでいたという。
小さな一歩から始まる桂子さんの怒涛の変化と学び、スペース業界におけるコーチング、そして、桂子さんの想いを伺いました。
宇宙(衛星利用)がより身近に

ドイツのロケット製造会社にて営業を担当している桂子さん。
ロケットは国際宇宙ステーション(ISS)に人やモノを運ぶだけでなく、衛星を宇宙に打ち上げる目的でも多く利用されている。
近年は技術の発展とともに衛星の小型化・低コスト化が進み、日常生活に関わる商業分野でも利用の輪が広がっている。
「いろんな種類の衛星をライドシェアして比較的安価に打ち上げられるようになる中で、『より特定の軌道に衛星を投入したい』という要望が出てくるようになりました。
そうすると、特定の軌道まで直接お乗せします、というサービスが重要になってきます。
うちのドイツの会社はまさにこの分野に特化したロケットを作っていて、私は衛星事業者向けに『衛星を打ち上げたいところに、こういった形でお届けできます』というトランスポーテーション・ソリューションを提供しています」
衛星を利用する目的は多種多様だ。
「今、コマーシャル分野で特に盛んなのは『地球観測』です。
衛星に搭載したカメラを使って同じ地点を定期的にモニタリングし、変化を観察するものです。
よく使われるのは、地震や災害が起きた時ですね。
宇宙からの映像を見ることで、被害状況が一目で分かります。
商業分野では、農業での利用が進んでいます。
映像だけじゃなくレーダーやデータを活用して、収穫時期を予測したりできる。
特にブラジルやアメリカの大規模な農業でビジネスに利用されていますね」
自分が本当に何をしたいのかを全く考えていなかった

宇宙業界について熱く語る桂子さんだが、コーチングと出会った当初は、キャリアに悩んでいたという。
「コーチングと出会った2022年はまだ前の会社にいました。
スペース関連の仕事にも携わっていましたが、会社が過渡期にあって難しい時期で、本格的にスペース業界でやっていきたいのか迷っていました。
子供もまだ3~4歳と小さい中で、セールスの仕事は衛星関係の案件になると取引額が何億、何十億円単位になるのでストレスも大きくて。
そんな環境の中で、『自分にどこまでできるかな』と、すごくモヤモヤしていました」
「ちょうどその頃、中学・高校時代の同級生である町田真彩子さん(まあちゃん)から連絡をもらいました。
彼女はゆりさんの講座を受講してすごい変化があったんですよね。
あっという間にゴング奏者になって、サウンドセラピーをやっていて。
それが1~2年の間の出来事で、『いったいどうした?』みたいな。
劇的に人生が変わったことに驚きました。
まあちゃんからUdemyの朝活&夜活の講座をおススメしてもらったのでやってみたら、自分がいろいろな固定観念にとらわれていたことに気が付きました。
アメリカで生活しているとはいえ、『ネイティブでもないし、アメリカの会社で役職を目指してガツガツ働かなくても、そこそこでいいかな』と、どこかで考えている自分がいたんです。
その頃、シアトルの大手企業からいくつかもらっていた面接のオファーに全落ちしたタイミングでした。
『なんでだろう』って考えていた時にちょうど朝活&夜活講座を受け始めて。
そしたら、自分が本当に何をしたいのかを全く考えていなかったことに気付いたんです。
『与えられたポジションに当てはまる人』になることしか考えられていませんでした。
そのあとすぐに、当時の上司に、もっと宇宙の仕事をやりたいという話をしたら、結構気軽に『やってみろ』と言われて。
国際セールスディレクターのポジションを任されることになりました。
話してみると全然変わるというか。
やりたいことが決まっていて、その思いに伴って行動するって本当に大事なんだっていうのを学びました」
その後コーチングスクールの受講生募集を知り、迷うことなく受講を決めたという。
2週間後にちょっとドイツ来て

思いを行動に移した桂子さんは、さらに大きな変化の波に乗ってゆくこととなる。
「コーチングの勉強を始めてから、すぐに劇的な変化がありました。
忘れもしない6月、当時の会社が別のアメリカ宇宙企業に買収されたんです。
でもその会社では軍事・政府系の衛星やNASA関係の衛星の打ち上げがメインになりそうで、私が本当にサポートしたいと思っているコマーシャルのお客さんとは違う層だな、と悩み始めていて。
ちょうどその時、本当にタイミングよく、今のドイツの会社の上司と話す機会がありました。
事業内容はよく分かっていたので、『もしポジションがあるなら、私のやりたいことと事業がすごく合致している』 と話したら、なんと次の日にはCEOと面談することになって。
その時は私の気持ちもすごくハッキリしていたので、CEOにそれを伝えたら、同じ方向を向いていることを確認してもらえて。で、『2週間後にちょっとドイツに来てよ』って言われたんです。
多分、朝活&夜活講座やコーチングを勉強してなかったら戸惑ったと思うんです。
でもその時は自分の気持ちや目的がはっきりしていたので、迷わずドイツに行きました」
それから2か月後、桂子さんはドイツの会社で働き始めた。
キャリアで得た手ごたえと罪悪感

新たなポジションでやりがいを感じる反面、出張で家を空けるたびに子供や夫への罪悪感にさいなまれるようになる。
「『なぜ出張することをネガティブに感じるのか?』、『なぜ罪悪感を持つのか?』
コーチングの練習で深く話すうちに、自分の母親との関係に辿り着きました。
専業主婦の母親に育てられたことはすごくありがたくて、当たり前だと思っていたので、それと比べて自分が子供や夫に提供しているものが少なすぎると思っていました。
『家を守るのは母親じゃないといけない』というリミティングビリーフがあったんです。
それに縛られていると気付かせてもらいました。
コーチング仲間の経験や話にサポートされたところも大きくて。
そうやって対話を重ねるうちに、『申し訳ないな…』ではなく、『やりたいからやらせてもらうね、ありがとう』と前向きにとらえられるようになっていきました。
とはいえ気を抜くと元に戻っちゃうので、そのたびにジャーナリングをして、気付きを得るようにしています。
コーチング講座を受けて、自分の考え方に疑問を持って、思考を見直す勉強をしたことが、日々の生活で役に立ってると思います」
怖いけどやってみると、違う世界が見える

そして、2024年は桂子さんにとって飛躍的な成長を遂げた1年となった。
「今のポジションは営業だけじゃなく、より多くの人に事業を知ってもらうための活動も大事な役割なんですが、2024年の初め、急遽上司の代わりにカンファレンスで登壇することになったんです。
めちゃめちゃ怖いし、ネガティブな感情がたくさん出てきて。
宇宙業界で経歴が長い周りの登壇者に引け目を感じて、『私なんかが話をして誰が聞いてくれるのかな…』と、悩んでました。
当時はゆりさんのPodcast “怖いけどやってみることの意味”をひたすら聞いていましたね。
他には、会社に社訓のような言葉として、“if you are not failing, you are not trying enough.” というのがあって、そんな社風に背中を押されたり。
コーチング練習では『失敗することの、何が怖いのか?』と深く聞いてもらって。
怖いけど一歩踏み出した方々のことを思い出しながら自分を鼓舞して、何とか登壇をやり遂げたんですね。
そしたら『あ、こういう感じか。もっとこうすればよかった』というのが急に見えるようになって。
結局1年間で3か国・3回の登壇をしたので、やってみると本当に違う世界が見えるというのを、身をもって学びました」
社会通念が今すごい勢いで変わってきている感じがします

「子育てしながらバリバリ働くことに関して、特に日本では女性が肩身の狭い思いをしなきゃいけない状況があると感じているんですが、それが今、すごい勢いで変わってきていると思います。
先日シリコンバレーで日本の商社の男性と話した際も、その変化を感じました。
彼は、奥さんがアメリカからのリモートワークというかたちで、日本の会社で働き続けることをサポートしているんですが、商社のガツガツした雰囲気の中、仕事を抜けて子供の世話をすることですごく肩身の狭い思いをしていると言っていて。
なんで肩身が狭いと感じるのかも気になるところですが、そうやって男性が女性をサポートするような夫婦の形もあるんだということですね。
その男性が肩身の狭い思いをする必要はないはずなんです。
うちの会社のCEOは子供を抱えながらミーティングにに出たりすることもありますが、人事チームはそれを結構大々的社内で写真共有したりしています。
私の旦那も私の出張に合わせて会議の時間を調整してくれてますけど、マネジメント層の育児に対するそういった姿勢を、彼の会社の人事も評価してくれてるそうなんです。
なので社会通念が今すごい勢いで変わってきている感じがします。
私たちの“当たり前”や“思い込み”って社会通念に由来する部分も多いと思うので、それがどんどん壊されて変化してる時代だからこそ、コーチングが業界問わず重要になってくるんじゃないでしょうか。
会社でも最近コーチングが導入され始めましたが、男女問わずニーズが多いのはやっぱりワークライフバランスです。
ロケット業界って、ものすごい達成感ややりがいがあるんですが、それだけに個人の負担も大きいので、理解が必要な業界で。
会社も今、ワークライフバランスに力を入れようとしているんだと感じています」
昔からずっと自分のコアにある気持ち
「ゆりさんに、『どう思われて死にたいですか』と質問された後、ずっと考え続ける中で気付いたのは、私の根底には『海外で生活したい、働きたい』、そして、『自分は日本人だ』という強い思いがあるということ。
なので私は、日本と海外の間に入って、懸け橋になる人間になりたい。
それが私にとってのコアであり、すごく大事だということに気付いたんです。
アメリカで働く大変さと、それでも『やりたい』っていう人たちの熱意が、私にはすごく分かります。
なので、これからアメリカで働きたいと思っている若い世代のサポートができたらいいなと思っています。
今は会社で日本に関わるプロジェクトにフォーカスしてるんですが、それが落ち着いたら、まずはこのシアトルから、日本人のネットワークを広げていくつもりです。
そうして将来的に、シアトルに来る人たちのサポートができたらいいですね。
ビジネスになるかどうかはまだ分からないけど、形にしていきたいと考え始めているところです」