医療×コーチング こうらえりさん

医療人から患者様、その家族の幸せへと笑顔が広がっていく世界

「目標を持って、キラキラした人生を生きていい」

薬剤師として医療にたずさわる、こうらえりさん。

“ビジョン実現コーチ、未来マップファシリテーター”として、人材育成研修の講師としての活動のほか、コーチングの考え方をベースとした授業や薬剤師のためのコーチング講座を開催している。

薬剤師、コーチ、母親の3つの顔を持って歩み続けるえりさんの、コーチングとの出会いや学び、今後の展望について伺いました。

子供のいいところを引き出せるコーチのような存在になりたかった

コーチングを学ぼうと決意した一番のきっかけは、子育てだった。

「『お母さんなんだからちゃんと育児をしないといけない、働いているんだから子供のことをしっかりと見ていないといけない』 周りにそう言われている気がして、ずっとガミガミ・イライラしていました。

本当は子供のやりたいようにのびのびと育てたかったんですが、結局周りの目を気にして、子供をコントロールするような育て方になっていました。

本当は、子供のいいところを引き出せる“コーチのような存在”になりたかったんです。“親としてのコーチのなり方”を検索して、コーチングにたどり着いたのが最初の出会いです。」

「コーチングのことを調べるうちに、コミュニケーションについても深く学べると分かりました。職場では、コミュニケーションが患者さんの心を明るくしてくれると感じていました。コーチングの学びを通してコミュニケーションスキルも習熟させることができれば、仕事に活かせると思ったのが2つ目のきっかけです」

生き方について悩んでいたことも、きっかけの1つだった。

「コーチングを学びたいと思った時は40歳前後でした。周りから見れば仕事も家庭もあって、子育てもして、めちゃくちゃハッピーな人生に見えていたかもしれません。

でも私自身は人生に全然満足していなかった。『このまま生きてていいのか』 『毎日つまらない』と感じていたんです。

明確な目標がある訳ではありませんでしたが、コーチングを学びながら自分らしく生きられるヒントが見つかるといいな、と。そういう軽い気持ちが3つ目のきっかけでした」

対人関係の経験則を、理論として学びなおす

コミュニケーションに関する学びには大きな納得感があった。

「職場や家族、子供との対人関係において、信頼関係はとても大切です。コーチングでは人と関係性を築くためのベースとなる理論を学びました。これまで経験則でしかなかった対人関係についての知識を、言語化されて体系立った知識として学びなおせたことが、一番納得できたしスッキリしました。」

学んだスキルや理論は、実践を通して腑に落ちることが多かったという。
特にコミュニケーションには “質”があることに気が付いた。

「例えば、若い頃は飲み会で場を盛り上げようとして、周りの話に対して自分の話をかぶせてしまうことが多かったです。話していても、結局自分のことを考えながら聞いているというか。

それに対してコーチングでは、真に相手を理解するためのコミュニケーションを学びました。

『相手を理解したい。この方に興味を持って、深く話を聞きたい』という思いに従って質問して、どんどん話してもらうと、心地がいいし、じっくり話すことができる。

お話しした方に対する見方が変わって、より信頼できるようにもなりました。『こういう風に一緒に働きたい』という、今までは考えつかなかった新しいアイデアに結び付いた経験もあります」

どんな小さな想いでも言葉にして出す

「コーチングは目標達成にも使えると分かりました。ゆっくりではありますが、実践しながら確実に前進できている感覚です。

コーチングの一番基本的な考え方の1つは、『自分を深く理解すること』です。

私自身、自分の状態を理解するにつれて、本当の気持ちに気が付き始めました。
例えば大人になると現実に追われて、夢とか理想を語ってる余裕がなくなってしまうんじゃないかと思います。でも自分の状態や状況が俯瞰できると、そこにある感情や想いに気が付くようになります。

どんな小さなことでもいいので、自分の想いを言葉に出せるようになりましたね。

そうして自分の想いに気付いてコーチに話すうちに、『話したんだったら、叶えたいな』と思うようになったんです。すると次は、『誰に相談して、どう行動しよう』といった具体的な道筋が見えてくるようになりました」

自分の人生を自分で決めて生きていい

「40代になっても、目標を持って人生をキラキラさせて生きていいんだよって気付いた時、目の前がパッと明るくなりました。子供の時はみんなキラキラした目をしていても、大人になると目の前の現実を生きるので精一杯になってしまう。

でも、やっぱり目標があると生き方が変わります。そういう人生を歩んでいいんだと自分に許可を出せたことが、一番大きな変化だったと思います

「今の生き方に疑問を持っている人は多いんじゃないでしょうか。でもどうしたらいいのか分からなくて、何年も経っている。私も実際にそうでした。

そこでコーチングを通して、目標を持って生きていいんだと思えた時、このコーチングの考え方が広まれば、皆さんの人生が変わるんじゃないかと思いました。そして、そのために行動したいと思えるようになったんです。

それまで私は“医療人”という価値観の中にいたんですが、コーチングを学んで『自分の人生を自分で決めて生きていい』と気付いてから、自分はコーチとして活動したいし、してもいいんだと考えられるようになりました

患者様が抱える不安を深く深く聞いていく

コーチングの学びはえりさん自身の変化に留まらず、患者様との関係にも変化をもたらした。

「薬剤師には服薬指導といって、薬の使い方や目的を患者様に説明する役割があります。でも患者様からすると、ただ説明を受けたいだけじゃないと思うんです。

医師や看護師、理学療法士、リハビリの専門家など、色々な方からの説明を受けますからね。やっぱり患者様だって本当は自分の話を聞いて欲しいんだと感じました」

「クレームについて患者様の話を聞いていくと、本当の原因が治療や薬とは別にあるケースを何度も経験しました。

治療や薬に対して不満がある訳ではなくて、その裏に隠された不安や悩み、困りごとがクレームとして表面的に出てきている

なので、患者様が抱えている不安について深く深く聞いていくことが大切だと感じたんです。そうしてコミュニケーションを取っていくことが、ひいては治療の効果を大きく左右するんじゃないかという経験もありました。

患者様との信頼関係を築いていくためにも、コミュニケーションがすごく大事だと実感しています」

薬剤師という職業にもコーチングを広めていきたい。

「一番期待できる効果はチームビルディングでしょうか。部署内でのコミュニケーションがよくなると、仕事のやり方はもっと変わってくると思っています。

薬剤師は専門職なので専門知識のための研修が優先されているんですが、コーチングをベースにした研修を行うことで、職場内での信頼関係が築けて、コミュニケーションが円滑に進むと期待しています。そうすると業務もスムーズに進みますし、人間関係によるストレスも減るんじゃないかなと思います。

実は、医療職は離職率が高いという一面があります。職場の人間関係がよくなれば、離職する人が減るんじゃないかとも考えています」

医療業界の離職率が高いのは、資格を持っているため再就職がしやすいというだけでなく、コロナ禍の負担が大きかったことも影響している。

「特にこの数年間の離職者はすごく多かったです。休みは取れませんでしたし、すごくピリピリして、疲弊していました。日常生活における制限もたくさんありました。正直、医療従事者の数が少なくなると、サービスの質も低下してしまうと感じながら働いていましたね。

コーチングによってチーム内のコミュニケーションが円滑になれば、辞める前に相談に乗ることもできます」

医療人から患者様、その家族の幸せへと笑顔が広がっていく世界

医療業界にコーチングを広めていくために、

「まずは部署内での活動を継続していきたいですね。コミュニケーション研修や、自分自身を見つめなおせるような研修も行いたいです。自分がなぜ医療に関わっているのか、どんな医療を提供していきたいのか、そういった想いは、学生時代や就職した当初は持っていたと思うんです。

でも働く中で職場の空気に埋もれてしまって、夢が無くなっている職員はきっと多いです。

なのでコーチング研修を通して、何のために働いているのかを今一度考えることで、医療人それぞれが目標を持って働きながら、よりよいサービスにつなげていけるんじゃないかと思います」

えりさんの思い描く世界はあたたかい。

「コーチングを通して医療人が自分の提供したい医療の在り方を見つけて、理想の働き方ができるようになったら、その先にある患者様や、患者様の家族も幸せになれるんじゃないかと思っています。

なのでコーチングを学ぶことで、医療人と患者様、そしてその家族の方の幸せや笑顔が広がっていく世界をイメージしています。

まずは職場内で、小さくてもいいのでコーチング研修を行っていきたいです。実習生の方も受け入れている環境なので、そういった“卵の存在”の方々にも一緒に研修をしてもらいたいです。

研修の中でどんな風に仕事をしていきたいのかを彼らにも問いながら、一緒に医療業界を盛り上げていきたいですね」

こうらえり