教育×コーチング:堀尾由香理さん


教育現場で子ども達が自分を幸せにする力を育む


「“ジョイフルスピリット”― 生涯自分を幸せにできる力 ― をつけてもらいたい」

非常勤英語講師・未来マップファシリテーター・Mental Breakthrough Coaching™認定ライフコーチとして活動する堀尾由香理さん。

アメリカの短期大学を卒業後、英会話教室の講師からキャリアをスタートし、英語教師として通算20年にわたり教育現場に携わってきた。

一度は教育現場を離れたものの、コーチングでの学びを通して再度教員として子ども達に関わりたいと決意。

子ども達、そして周りの大人にも変化が広がってゆく由香理さんのエネルギーの変化、そしてコーチとしての想いについて伺いました。

コーチングを受けたのに変わらなかった

由香理さんがコーチングに出会ったのは2021年。
長年受けていた不妊治療に、区切りをつけたタイミングだった。

「当時の私はずっと子供が欲しいと思っていて。子供がいることが理想の人生で、いいお母さんになりたいと思いながら日々を過ごしてきました。

けれども不妊治療を続ける中で、『あ、もう子供が持てないんだ』って思って。
子供を持たない人生を受け入れる決意をしたんです。

心に穴が開いたような状態を埋めたくて、その時初めて出会った半年間のコーチングを受けました。

行動や環境を変えることにフォーカスしていたので、仕事を増やしたり住む場所を変えたり、実家を二世帯住宅にして、新しい家族の形で再スタートしようと、やれることは全部やりました。

それでも心に抱えていたものは埋まらなくて、むしろ絶望感はどんどん大きくなっているような感じがしていました。

何より、コーチングを受けたのに変わらなかったことが本当に辛かった。

『これから何を目的にして、何を楽しみに生きていったらいいのか』 

そんな思いでいっぱいで、毎晩布団の中で泣きながらポッドキャストを聞いている時、ゆりさんのポッドキャストに出会ったんです。

『もしかしたら自分の中にまだ気付いていない“何か”があって、それが人生の足を引っ張っているのかもしれない』 
『今こそ学ぶチャンスなのかも』 
そんな直感的な思いが湧いてきて、ゆりさんのコーチングを申し込みました」

コーチングを受けることで、“自分”に対する認識が変わっていくのを感じた。

「それまで自分だと思っていたものが、実はただの思い込みや幼い頃から積み上げてきた概念にすぎないと気が付きました。
それらが知らず知らずのうちに人生を作ってると知って、愕然としたんです。

でも同時に、書き換えることができるとも知りました。

ゆりさんと一緒にプロセスを踏みながら思い込みやブロックを外していくことで、今までモノトーンに見えていた現実が、カラフルに変わりました」

寄り添いながら一緒に歩んでくれるコーチになりたい

吉川ゆりのコーチングを受けたことは、由香理さんがコーチを目指すうえで大きな指針となった。

「ゆりさんのコーチングを通じて、潜在意識を扱うコーチングに開眼したような感覚がありました。例えば当時の私は、子どもがいないと生きていく意味がないと思っていました。

親孝行や周囲との深い付き合いも全て子どもとつながっていて、『自分が手に入れたいものは、もう手に入らない』と思い込んでいたんです。参観日に行くことすらも私の夢だったので、家族としての行事も何もかも手に入らないと絶望していました。

そんな時、ゆりさんがして下さった質問

——『子どもが手に入らないことで手に入らないことって何ですか?』——

そう聞かれて改めて考えてみたんです。

人を愛すること、愛してもらうこと、人とのつながり。

それらは子どもがいなくたって、いくらでも手に入る。

そのことに気づいた瞬間、世界がバーッと広がりました。

そんなふうに心の中を優しく見て、『まだまだあなたには違う世界があるんだよ』と気付かせてもらえる。寄り添いながら一緒に歩んでくれる存在――

そういうコーチに私もなりたいと思って、コーチングスクールに申し込みました」

子ども達と関わっていられることがすごく楽しくなった

コーチングを学び、自分とコミュニケーションが取れるようになったことで、教員としての在り方も大きく変容することとなる。

「以前は、頭の中にある考えがそのまま“自分”だと思っていました。

『子どものできない私は、人間として劣っている』、『神様にも選んでもらえなかった』 自分のことをそう認識していたんです。

でも本当の自分ってもっと心の奥底にあるんですよね。

インナーチャイルドや直感、ハイヤーセルフといった、自分の内側にある本当の声を聴く方法を知れたおかげで、自分を受け入れることができました。

すると不思議なことに、人のことがものすごく好きになったんです。

それまではコントロールできない存在だと思っていた子ども達のことを、『そのままでいい』と思えるようになったことで、とにかく愛おしく感じられるようになって。

今まで自分は教員に向いてないと思っていたんですけど、子ども達と関わっていられることがすごく楽しくなったんです」

心から寄り添ってもらうことで、内側からパワーが湧いてくる

ベクトルを目の前の生徒に向けて、『この子達は今、何を必要としてるんだろう』 『どんな状況がこの子達を幸せにするんだろう』って考えた時に、初めて本当に必要なものに気付きました。

それまでは授業準備にすごく時間がかかっていたんですが、こんなにしなくていいって、そこで気が付いたんですね。今までの自分は、鎧をまとっていたんだって分かりました。

『一人の人として、あなたに欠けているものは何もない。
ただ、今何か学びがあるならサポートするよ』

私はゆりさんにそうやって寄り添ってもらった時、自分の中からパワーと、やりたいことが湧き上がってきました。その感覚を今でも覚えていますし、コーチとしての姿勢を知ることができました。

そういう姿勢で目の前の人のニーズをちゃんと見つめる余裕が生まれたことが、教育者として現場に学びを還元できている部分だと思っています

一度は教育現場を離れた由香理さんだが、コーチングを受け、学んだことで本来の自分の声に気が付き、再び教育現場に戻ることに。

子ども達に本当に必要なことを届けようとする由香理さんの活動は、次第に大人も巻き込んだエネルギーの渦になってゆく。

“自分で人生を作っていける”という感覚

「コーチングスクールに入ったことで、お互いの夢を応援し合えて、学び合える仲間ができました。

これは学び仲間とよく話していることなんですが、私たちは自分の意図したように、人生を自由に作っていける存在です。これってもっと早く知っていれば、もっと自分を認めて、好きな事や価値観を大事にしてこれたのにって思うんです。

そしてこれからは、自分の手で人生を大切にしながら歩んでいけるということでもあります。

私が教育現場に戻りたかった理由の一つとして、こういったコーチングの学びを学校でも広めたいという思いがありました。

どうすれば子ども達にコーチングを提供できるか考えていた時、“未来マップ”というコーチングをベースとした子ども向けのキャリア教育があることを知って、未来マップファシリテーターの資格を取りました。今はその未来マップを、授業や先生向けの研修で活用してもらっています」

「学校での活動を通して感じたのは、子ども達が自分と向き合う時間をいかに取れていなかったかということです。

例えば、学校の中でエリートと言われているような子でさえ、『自分のことは全然ダメな人間』だと思っていたり、『何が好きで、何をしたいのか考えたこともない』 そう話してくれた子もいました。

学校生活の中では充実しているように見えていても、心の中ではそんなふうに感じている。ひとつひとつの出来事に対して、自分の心が何を感じているのかを見つめる時間が取れていないんです。

でも、そういった内面の充実感こそが本当に必要なことだと思うんです。

日々目の前のことをこなすことで忙殺されてしまうと、“自分で人生を作っていける感覚”が頭の中から抜けていってしまう。だからこそ、子どもの頃から少しでも自分と向き合う時間を作ることがとても大切だと思うんです。

特に、仲間と対話できる時間を作ることが大切です。

私自身、コーチング仲間と日々色んなことをシェアする中で、『今の自分が人生を作っていける存在なんだ』 ということを思い出させてもらっています。実際、自分以外の子も同じように悩んでることを知って、安心したと言ってくれる子も多いんです。

そうやって仲間達と“協働調整”していけることが本当に大きな力になると思いますし、それが叶う場として、学校があるんじゃないかと思っています」

先生達も巻き込んだエネルギーの循環

由香理さんが行う未来マップの授業が変化を及ぼすのは、子ども達だけに留まらない。

「未来マップの授業をしていると、最初はただ見ていた先生達が、『私、気付きました。実は夢があります!』って生徒の前で言い始めたりするんです。

そうやって大人も夢があって、それを共有できる時間にもなっているんです。

ある先生はこの授業を通して、サッカー選手になりたいという思いをずっと抑えていたこと、やっぱりサッカー選手になりたいということに気付かれました。

そしてなんと、夏休みの間に試験を受けて、サッカー選手になったって報告してくれたんです。

当然、先生がサッカー選手になったってことを生徒にも話しますし、そうやって大人が夢を叶えていく姿を生徒に見せられることもすごく嬉しいですよね。

先生の行動力に私もインスパイアされますし、それがとても大きなエネルギーの循環になっていると感じています」

自分を幸せにできる力を育みたい

「やっぱりコーチングって人間学だし、自分を知るツールです。

脳の仕組みや自分とつながる方法、マインドフルネスを学ぶことができますし、そういったことを学ぶことで、自分自身を大事にできるようになる。

それってつまり、命を守ることだと思うんです。

子ども達自身も、自分と向き合うこと、人と対話することが本質的に大事だって分かってるんですよね。命を大事にするって、学校の現場では絶対に大切にしていくべきことの一つです。

なので、コーチングの学びや自分と向き合う時間をもっと教育の中心に据えていけたらいいなと思っています。それこそ教育委員会や文部科学省にも、その大切さを伝えていきたいですね。

『自分は見てもらえている』 『そのままの自分を大切に思ってもらえている』 そういうふうに誰かから伝えられたり、自分自身で思えるようになっていけば、きっともっとあたたかくて、豊かさにあふれた社会になっていきますよね」

「人生って、予定外の連続だと思います。

だけども、『ここからまた新しい人生を作っていける』って楽しめる自分なら、何があっても大丈夫だって思うんです。

そういう“ジョイフルスピリット”―― 生涯自分を幸せにできる力――を子ども達、そして周りの大人達にもつけてもらえたらいいなと思っています。

コーチングや未来マップを広めながら、自分の力で人生を作っていく楽しみをみんなが感じられる世界を作っていけたらいいなと思っています」


堀尾由香理

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